論 考

語るに落ちる

筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)

 政治資金規正法改正問題は土壇場で、岸田氏が公明党案を丸のみし、さらに維新が同調して、与党は4日の決議をめざしている。

 目立つのはパーティ券購入の氏名公開基準が20万円超を5万円超に変更する程度で、実施は2027年1月から。企業団体献金の禁止、政策活動費の廃止または全面公開、連座制の問題などは無視している。

 ここまでの流れをみれば、裏金問題に端を発して自民党に対する批判が燃え上がった。岸田氏は、その勢いに恐れをなして政治資金規正法を改正する行動を起こした。しかし、肝心の党内一本化ができず、なんとかまとめ上げた内容大山鳴動して鼠一匹である。

 いわば名目は政治資金改革であるが、中身カラッポの時間稼ぎ作戦だ。岸田氏は大事業をこなしたような安堵感らしいが、頓珍漢も甚だしい。政治資金問題から巻き起こった政治不信感をますます大きくしたとしかいえない。

 問題の本質は単純だ。バーティ券を購入する側が名前を秘したいのはなぜか? 後ろ暗さがなければ名前の公開が不都合なわけがない。

 政治家として、政治資金が当然の出費であれば、使い道を隠す必要はない。むしろ、それが当然であって、しかも政治活動を締め付けていることがわかれば、人々の理解が進む。ところが、おカネがかかると喧伝しつつ、なにに使うのかを問われると隠したがる。これでは理解どころではない。

 不信感を増幅しているのは政治家自身である。政治家・政党同士の野合に成功したからといって、人々の理解が進んだわけではない。同じ穴のムジナの数が増えただけである。