論 考

赤信号みんなで渡れば、なお危ない

筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)

 プーチンが北朝鮮訪問、善隣友好なき国同士の善隣友好という戦略的パートナーシップを構築するらしい。陰惨で危険なポンチ絵である。

 客観的には孤立した同士、同病相憐れむという言葉が浮かんだ厄介である。

 NATOストルテンペルグ事務総長は訪米して、「中国二兎を追うことはできない。いずれかの時点で、そして路線を変えないのなら、NATOとしては代償を払わせる必要がある」と語った。

 イスラエルのガザ侵攻は、善隣友好を旨とする? 西側の影響力で停戦できそうなものだが、依然として出口が見えない。

 一口でいえば、外交なき世界政治だ。アメリカ覇権による秩序維持を正義とするためには、このよう事態になった原因を究明しなければならない。その真摯謙虚な態度なくして振り回すのは大義にあらず。

 ウクライナ主唱の平和サミットの声明が全参加国共同にならなかったのを、各国の損得勘定と理屈するだけでよいのか。それ以上にアメリカに対する割り切れなさが大きいとみるべきだろう。

 中国がロシアの後ろ盾になっていると批判を強めているが、ロシアのウクライナ侵略の最初から、本気で中国とともにロシアを説得する体制をつくらなかった事実が残る。

 ことのついでに覇権をめざす中国を叩こうと、二兎を追ったのはアメリカではなかったのか。時間の経過とともにどんどん中国と西側の懸隔が大きくなり、ついにはロ中一蓮托生論が登場する。しかし、それが問題解決に貢献するか。

 外交なき政治が生んだのは、世界のハイチ化ではないのか。えーい、面倒くさいとなれば、世界戦争になる。このままであればハイチ化がさらに進む。

 お仲間同士の意志結集会議など百年河清を俟つに等しい。ということが理解できないほど世界の政治家の程度が低いのであれば、人々は救われない。

 法秩序の世界を高唱するのであれば、いわゆる西側諸国は、中国とグローバルサウスの国々が一緒に問題解決に動くための条件を模索するべきだ。それを具体的に進めるのがG7ではないのか。いまはs7でしかない。こんな調子だからレームダック6と呼ばれる事態になった。

 各国の国民諸兄姉に考えていただきたい。安全を守るためといいつつ、莫大な軍事費を投入して、資源と資金を無駄遣いした結果――そう、世界は史上最大の軍事力の時代にあるが、平和どころか崖っぷちへどんどん進んでいるではないか。