くらす発見

家事と石鎚山の間で

筆者 曾野緋暮子(そのひくらし) 

 6月は衣替えの時期だ。普段の家事に加えてやることが増える。

 例年ならさっさとスケジュールを組んで取り掛かるのだが、近年の天候不順が足を引っ張る。夏物に替えれば良いと思っていても雨が続くとまだ上着が必要。と思っていると夏日! 半袖、半ズボン等夏物が必要。ソックス、手袋、帽子等々の取り替えも付いて回る。布団、毛布か、タオルケットか等の寝具も然り。

 とは言え、ダウンやウール類は着ないだろうとクリーニングに出す。クリーニング代も値上がりしているので手洗い可の物は全て自宅で洗濯するが、ドライクリーニング必須の物もある。クリーニング代が割引の日を狙って出すので自分の思い通りの日程とはならない。天候が安定しないので洗濯するタイミングを掴みにくい。

 思い通りに片付かない。「この日は○○をした。」という満足感がない日々が続く。天候不順と同じく気持ちもストレスが溜まる一方だ。でも、自分が動かなきゃ何も始まらない、終わらない。スマホのカレンダーにその日にすることを少しずつ書き込み、終了したら消すというチマチマとした自己管理をしつつ何とか片付けを進める。

 そんな中、ずっと行きたい! と思っていた石鎚山に連れて行ってくれる話が飛び込んできた。宿泊手配等の段取りをすることが条件だ。

 そうなると、最優先に石鎚山登山を入れて、日々のスケジューリングだ。後回しにして良い物はスマホカレンダーでどんどん日程をずらす。山歩きのための訓練を優先する。平日の山行だから宿はすんなり確保できた。

 急な登山なので参加者4名。石鎚山は割と初心者の山らしいが、一度も行ったことがないのは私だけ。同じ百名山に何度も行くことは余りないので今回付き合ってくれるのは本当に有難い。

 雨続きの中、運よく晴れマークになった。でも、夏日らしい。1日目は朝遅めの出発で、早目に登山口の宿で夕焼けを眺めながらのんびり過ごした。

 2日目朝6時、登山開始。暑さを覚悟していたが、休憩時は風が吹くと汗冷えで思わず上着を羽織る。平日、ロープウエイもまだ動いていない時間で人が少なく、木々の緑と青空、山並みをゆっくり楽しめた。

 石鎚山の代名詞と言われる2の鎖場。「必ず3点確保」とのリーダーの声にちょっと緊張。鎖をしっかり掴み、足場を確認しながら登る。突如足場を踏み外した。一瞬頭が真っ白になったが、リーダーが「腕の力で身体を引き上げて。」とアドバイス。グンと身体が持ち上がった時には自分の両腕に感謝した。(笑)

 石鎚山の次に瓶ヶ森にも行く計画なので、余力を残すため次の3の鎖はパスして巻き道を進んだ。

 ぐるりと周囲の山々を見ることができる山頂(1982m)に到着した。やったー! しばし、山頂からの眺めを楽しみ、写真撮影。山頂の先に天狗岳という本当の(?)山頂がある。ここは人が1人通れる位の細い断崖絶壁の道を往復するのでバランス感覚が落ちている高齢者には無理と判断し、眺めるだけにした。

 下山後、昼食を摂り、次の目的地瓶ヶ森(1897m)に向かった。1日に2座ってちょっとハードである。心地よいお天気と石鎚山に登れた高揚感でスタート。

 草原を歩いて高度を上げて行く感じだ。時々振り返って石鎚山をはじめとして山々を眺めながらのんびりと登る。山頂で珈琲&スイーツタイム。やっぱり山頂珈琲は最高!!!

 翌日から先送りしたツケが一気に回って来た。押し入れやクローゼットの防虫剤交換、水回り各所の湿気取り交換、冬物洗濯等々。

 家事って定年ないよなあ~。スマホで石鎚山、瓶ヶ森の写真を眺めながら自分を励ます。(笑)

 *石鎚山(いしづちさん) 愛媛県東部、石鎚山脈の主峰。標高1982m。四国第一の高い山。修験道の霊場。