論 考

ケジメをつけよ

筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)

 2023年1月から今年の5月まで、電気ガス代補助はざっと4兆円使った。これで一応緊急対策は終わったはずだったが、突如、8月から10月まで再度補助をおこなうと、岸田氏が表明。理由は、暑さ対策なんだという。

 予算は予備費を充当するが、数千億円。予備費が足りなければ次は補正予算、その次は打ち出の小槌の国債に頼ればいいというわけだ。

 予備費にしろ、補正予算にしろ議会の議論をきっちりおこなうのが筋道だが、そんなものは無視。岸田氏は裏道派であって、まるで首相権限が万能だと錯覚している。財政予算健全化という弥縫策すら、これでは矛盾する。

 国の財政がいずれいかなる困難に遭遇するかなどは、まったく考えない。さすがに、自民党内部も官僚も批判発言をしているようだが、岸田の面に水である。

 こんな御仁の性格分析をやったって意味がないが、それにしても、この人の神経は図太い。いや、もしかすると鈍すぎるだけなのかもしれない。いずれにしても、自分が政権の座から降りたくないという厭らしさは隠しようもない。

 ここまで世間の批判に鈍く、政権の座にしがみつく首相は、わたしの体験では初めてだ。なるほど、首相になればなにかを残すよう努力する。この人は、業績として残すものはないが、言行不一致の常連、しがみつきエキスパートとしては歴代1位を記録しそうである。

 政治家に美学や、美的センスを要求するのはないものねだりである。ただし、美学はなくても節操というものがほしい。要するに、「ケジメ」だ。首相に限らず、いろいろなリーダーに限らず、人として弁えたい一線である。

 自分で自分にケジメがつけられないほど、この人はからっきしだ。