2014/05
超高齢社会の自治会活動篠田敏道



On Line Journalライフビジョン姉妹本

あかでめいあ

学ぶ・考える・研究する
akademeia
MAY2014 第21号


目次
主催イベント報告1 総会学習会       
 Decent Live
 ちゃんとした生き方のススメ

主催イベント報告2 憲法の公開学習会    
 改憲の賛否を問われる前に
 知っておかねばならないこと

主催イベント報告3 公開学習会       
 民主主義を勉強しよう
 どうなってるの?日本人の民主主義

主催イベント報告4 カンパ活動       
 チャリティオークション・パーティ18th
 ゼロから1が立ち上がるとき


会員投稿1 社会構造問題への意見
小説『カルチャーショック』  
  建築構造設計の未来   元口武七
自動車税制に思うこと    斉藤和吉
  経済のためにどんどん濫費を?
入院で見えてきた日本の未来 村上恭司
  悪い真実なら聞きたくないけど
役割を終えた?         石山浩一
 「3号被保険者」制度について
友への手紙
              青山祐三朗

会員投稿2 民主主義実践の現場から
町内会の不思議        篠田敏道
  高齢者社会の自治会活動  
続 江戸大手町六十分一本勝負  
              駒波正太郎
帝国ホテル労働組合の     岩ア太郎
   総発言運動の軌跡から
大衆運動を基本とした       新妻健治
 新しい時代の労働運動の組織戦略と実践論    
政治を取り戻すアセンブリ
               薗田碩哉
安倍さん、この国をどうしたいのですか?
                         渡邊隆之

会員投稿3 読書会
札幌農学校と広井勇
               君川 治
河上肇評論集から国家主義を読む
               塩田昭男
「石橋湛山評論集」を読み終えて
               伊東正人
日清戦争と日韓併合
                奥井禮喜

ユニオンアカデミー2013の活動記録       
   第三次訪中交流団報道記事、他

 この本ではライフビジョン学会とユニオンアカデミー会員の学習成果を発表しています。1994年6月以降毎年5月発行。
 B5版70頁 頒価千円送料別
 発行日 2014年5月1日
 発行所 有限会社ライフビジョン
 〒151-0063
  渋谷区富ヶ谷1-53-4本橋ビル3F
  TEL:03-3485-1397  FAX:03-3460-4456
  office@lifev.com     http://lifev/com
 発行人/奥井禮喜   編集人/片山洋子



 人口ボーナスのアンカーである団塊世代が、今年から来年にかけて65歳を越える。定年後生活について個人的な資金や健康、家庭内人間関係などの備えはともかく、在宅時間が長くなる高齢者にとって最大の課題は終の棲家の、特に地域社会の居心地である。ライフビジョン学会会員から、自治会活動の体験を報告いただいた。
「あかでめいあVol.21」より抜粋


 高齢者社会に入って独居高齢者の増加、孤独死や災害時の対応等、自治会の重要性が増している。にもかかわらず自治会役員の担い手がいない。わが町内会でも、役員をやらされるなら町内会を脱退するとまで言う人がいる。
 平成25年度、私は輪番制で町内会の班長(役員)になり、諸般の事情で副会長を引き受ける事となった。折角の機会なので、高齢社会に焦点を絞って調査と分析を行なってみた。
ライフビジョン学会会員 篠田敏道


積極的に活動する価値は十分にあり
 自治会は世界でもめずらしい、日本の伝統的な地域空間的コミュニティで、どうも行政が認知した、地域における唯一の代表組織らしい。その自治会とは、どんな活動をしているのか。
 あるとき、A住民から隣接する公園樹木の枝が生活に影響があり伐採して欲しいと町内会に要望があった。会長が市役所に相談したところ、市長宛てに所定の書式で要望書を提出するよう求められたので即、提出した。
 後日、町内会副会長の私に近隣のB住民から、公園樹木の伐採は景観を損ねると抗議の電話があった。紆余曲折を経て最終的に、市と関係者で協議し決着すべきとして、町内会は調停役に徹し、なんとか解決した。
 ――このような問題には役所でなく、自治会が対応する。
 町内会の境にある自治会の雑草や樹木やゴミ等に問題があれば、町内会から隣接自治会に申し入れ改善をお願いする。決して勝手に処理をしてはいけない。わが町内会からも隣接する自治会に草刈り等を要望している。
 行事は自治会毎に実施する。集会所も町内会毎に保有する。自主防災組織も町内毎だ。山車や神輿を自前で揃えているところもある。道路を挟んだ向かい側の家は別の町内会で、協力して活動すれば良いと思うが住民の縄張意識なのか、なかなか難しいらしい。
 ゴミ集積所のごみが道路に散乱して管理が悪いので善処しろ、と町内会長が市役所に呼び出される。町内の道路工事等にも町内会長の同意書必要となる。他の団体や個人が市に要望があっても、町内会の意見と同意を求められる。
 自治会自体は法律に明記されていない任意団体(組織)だが、行政が自己保身やご都合主義で自治会に責任を押し付けてくるようにも見える。その代わり各種補助金という飴も用意されている。
 私の住む地域にも、自治会を束ねるN/T自治会連合会がある。地域環境整備に関する要望を取り纏めて市へ改善要請する。街角クリーン作戦、防犯パトロール、ふるさと祭り、合同七五三祝い、老人クラブとの懇談会等々の活動を行っているが、住民の認知度は低い。半強制的に参加する役員の中には単なる役務提供だけではないかとの声もある。
 しかし、各自治会単独では解決できない防犯・交通・防災無線等の住民要望への広域対応、各自治会の悩み等を相談し合う交流、少子高齢化社会への地域としての取り組み、自治会が無い地区の自治会設立への援助、地区全体の価値(ブランド)の維持等、積極的に活動する価値は十分ある。


自治会の組織と運営
 私が現在の住居に入居した際、早速町内会の人が来訪した。新しい班を構成したので班長をやって欲しいと言う。何ら疑問を抱かずに初代班長となった。
 最初の仕事は、町内会会費と既存の集会所建設分担金の集金だった。私は町内会入会には同意が必要な事も知らずに業務遂行し、会員予定者の全員が入会し、素直にお金を払ってくれた。
 現在でも自動的に入会している人が多いようだが、脱会者や最初から入会しない家も増えてきた。ゴミ集積場や防犯灯の世話になりながら町内会に入会しないのは問題だと、今期役員の中にさえ言う人がいる。町内会入会促進案内では、居住される皆様の平等負担となるよう訴えている。
 法の上では強制加入は違法行為で、入会は自由となっている。面倒だが入会しない理由を丁寧に伺って、問題を解消しようとお願いしている。
 町内会会長は、市の行政協力員に任命され、若干の報酬が支給される。仕事は自治会連合会、市区長会、青少年健全育成協議会や社会福祉協議会など、町内会会長を構成員とする会議体の総会、定期総会への出席、視察旅行などがある。
 他にふるさと祭り、七五三、街角クリーン作戦、敬老会などの行事、小中学校の入学式・卒業式・運動会、民生委員・児童委員の推薦、災害時要援護者への協力者要請等々、全てを一人でこなすとかなりの負担となる。
 町内会独自の仕事もある。
 町内会費の集金、未加入者の加入促進、会員の訃報・美化清掃・お祭り・自主防災・市役所や警察等公的機関からの知らせなどなど回覧物の運用。会員からの要望・苦情の受付及び対応、自主防災組織の運営(自主訓練・機材管理)、理事会の運営、集会所の運営(使用管理)及び設備備品の維持管理(火災保険・清掃・修繕)、ゴミ集積所の運営及び維持管理(当番制での清掃・各戸の捨て場調整・増設・修理)、環境美化運動(市主導で年2回)補助金申請、防犯灯・カーブミラー・警告灯の設置及び維持管理等、本当に多岐にわたっている。


会員の減少と増加する空家への対策
 定年後の転居、高齢者の死亡や施設入居等で空家、脱会者や未加入者の増加で会員数が減少傾向だ。
 市では空家対策条例制定の準備を進めているが、単なる管理のみならず、若い子育て世代の人に安価で賃貸可能なシステムの構築も一案だ、持ち主にとっても家の維持管理に好都合だと思う。空地は今ブームの家庭菜園や花畑として貸してもらうとありがたい。
 町内会の脱会者や未加入者の理由は、先の震災被害で町内会が対応しなかった。町内会は何をしてくれるの、人様のお世話になりたくありません、そっとしておいて欲しい、班長(役員)になるのが面倒、関心がありません、好きな人がやれば等々、相互依存意識の弱体化が顕著だ。
 一方、町内会の行事に参加した人からは毎年やってほしい、若い方や子供さんが多いので嬉しい、子供たちの声を聞けて元気が出ました、メダカすくいは楽しかった、役員の方本当にご苦労様でした。もう少し交流がほしい、集会所を他の利用方法も考えて、高齢者にもできるサークル(体操)の定例化を、子育てがし易い街作りを、子供神輿を担ぎたい、等の声も多く寄せられている。
 わが町内会の住民構成は、65歳以上が201人(17.2%)、75歳以上の後期高齢者が100人(8.5%)、15歳未満が184名(15.7%)、15〜64歳の生産人口は785名(67.1%)。現在、独居高齢者が約20名、高齢者だけの家庭も増えている。他の地区では高齢者が増えて自治会を解散したところもある。今から対応策を考えないと将来に禍根を残すことになる。


避けられる役員、なり手がいない町内会長
 班員が減少して輪番制の役員担当サイクルが短くなった班から、何回もやってきたので役員は免除して欲しいとの声がある。年寄りだから活動が出来ない、心身に障害がある、一人暮らしだから、会長になったら困る等の理由で役員免除を希望する人がいる。私の担当する班でも順番をパスした人のことを問題視する人もいた。
 そんな中で来期の輪番は、独居高齢者で安否確認の対象女性になった。「来期班長を」と打診したら「パスしたい」との意向。そこで私も含め班員全体で支えるとお願いしたところ、快諾頂いた。後日、町内清掃時に班員の皆さんにお話したら全員が拍手で賛同した。この問題は当分の間、輪番制を維持しつつ班内事情で柔軟に対応するしかない。
 町内会長も同様に、なり手がいない。
 高齢者は―― お役に立てない、一人暮らしだから、夫婦とも動けない。
 現役世代は―― 仕事が忙しい、共働きで家にいない方が多い、子育てに忙しい、要介護の人がいる、PTAや子供会等々の役員で忙しく時間がとれない、会社の仕事があり行事に協力出来ない。
 団塊世代等は―― もう人の上に立ちたくない、批判されるのは嫌だ、適任ではない、定年後は自由にしたい。
 と、様々な理由で会長職を避けたがる人が殆どだ。
 一方、関心のない人が多いのは困る、若い人達にも参加して欲しい、会長の負担が大きいので、ライフワークとしてやってくれる人が良い。市議会議員になってくれればもっと良い、報酬制にしても良いのでは、等の意見も多い。しかし、自ら名乗りを上げる人は皆無だ。
 わが町内会は近年、会長・副会長(2名)は各班長の中からくじ引きで選ぶことが慣例化している。当選確率が高いから、当たっても出来ないという人がいる。更に、会長・副会長の3人全員が活動に支障がある人が抽選されると最悪だ。来期は抽選を止め、班長さんが相談して決めるようにしたい。
 超高齢社会で役員を辞退する人が増えると町内会の存続が危うくなる。今から対応策を考えていく必要がある。


今後の課題と対応
 国や自治体がコミュニティの再編に力を入れているとの報道もあるが、道筋は見えてこない。当事者である住民は、政治や行政の不作為を嘆くより、住む町の将来に真剣に向き合い、皆で自ら考え自分にできる事から活動する事が求められている。
 そのための第一番は何といっても、役員や住民同士がコミュニティの大切さを粘り強く訴え続け、皆の理解の輪を広げていくことだと思う。
 先の大震災で被害を受けた住民もいる。近い将来想定されている大震災時には住民の相互協力が不可欠である。10人に1人が認知症とも言われる少子超高齢社会では、行政の援助には限度があり住民同士の支え合いが必要。住環境を維持し防犯や資産価値を高める為にも、増加する空屋・空地対策やゴミ・野良猫対策が必要。一人暮らしの人達が触れ合う場所が必要、誘拐や痴漢から子供たちを守ること等々、町内会の必要性は多岐にわたる。
 何と言っても町内は巣立っていた子供たちのふるさと、そして、終の棲家となる人もいるはずである。インターネットやメールによる交流が盛んだがその前に、普段の住民同士の交流は原点である。
 最近のわが町内は、他の自治会と比較して挨拶をする人が多くなった。学校の指導もあってか子供たちは殆ど全員だ。あいさつに一言添えればもっと良い。散歩している高齢者に「お元気ですネ」、子供たちには「学校は好き? 苛めは?」、植木の手入れをしている人には「便利な道具をお貸しできます」等々。様々な手段で町内のつながりを作る勇気と努力が必要だ。
 町内会のイベントでは、来場者に商品券等の抽選やゲームがあると多数の参加者はあるのだが、全体交流にはならない、知らない同士が交流できる工夫も必要。また、個人情報保護の観点から会員名簿を配布しなくなったことも、会員同士の交流を阻害している。今後は名簿への掲載と配布の同意を確認するなど、検討したい。
 自治活動の運営にも課題がある。各種団体等の会議出席者から聞かれる不満には次の種類がある。
 第一が、会議がだらだら長時間というもの。忙しい人・暇をもてあましている人が混在して、議長が適切に仕切れない。
 第二が従来どおりやれと主張する人。
 第三が、担当者が苦労の末決めたイベント、企画等に些細な問題を指摘する人。
 四番目が、会議やイベントの欠席者が批難されること。
 これらの意見に対して、会議は2時間以内とすること、企画などは担当者に一任すること、役員にも個別の事情があるので無理せず参加するよう助言し、また、参加しなかった人を批難しないよう、などと約束した。
 人は強要を一番嫌うものだ。会議等は効率良く・楽しく・お互いを尊重し・達成感があるものにしたい。リーダーはこれらを心得ての運営が望ましい。
 また、自らは動かないが背中を押すと頑張る人も多い、背中をやさしく押してあげるのもリーダーの役目だし、意識の高い人が意識の低い人を誘い見守りながら活動する等、次なるリーダーの育成も大切だ。リーダーが活動過程で、本人が成長し、周りも変わり、地域が変わる、更に日本が変わると思えば素晴らしい。


最後に
 さて、いろいろ好き勝手に書いてきたが、私自身が今後、どう関わっていったら良いのか迷っている。
 67歳の私の希望は、晴耕雨読・温泉めぐり・テニス・束縛されない仕事、そして出来る範囲での社会奉仕。面倒な役職は御免だ。
 わが町内には、現役や退職した教師、医師・看護師、公認会計士・税理士、パイロット・客室乗務員・整備士・管制官・空港会社社員、消防士・銀行員・鉄道関係者・不動産業・漬物業者・郵便局・電力会社関係者・農業関係者等々その道のプロや、絵画・習字・琴・舞踊等多種多様の能力を持っている方々が住んでいる。話す機会が少ないが、この中からリーダー候補を探し始めている。
 民生委員・児童委員の任期がまだ3年間あるので、70歳までは町内会をサポートしつつ、新たなリーダーを見つけたい。
篠田敏道 N町内会副会長 ライフビジョン学会会員







On Line Journal LIFEVISION | ▲TOP | CLOSE |